エクスタシー 2 〜極貧のオンナ?〜
―――ま、いっか。

見られたものは仕方ない。

あたしは数本の前髪が残った手のひらをチュニックワンピの裾で拭い、堂々とギャラリーに入った。

まだ客は入ってない。

「お疲れさん」

妹をはらませた男、萩野タケルがソファーに踏ん反り返って新聞を読んでいる。

―――何が『お疲れさん』よ。あんたに雇われてるんじゃないっつの。

心の中で言い返しながらも、愛想笑い。

毎月、数千万単位で絵画を売り上げる男、萩野。

諍いなどして手放すわけにはいかない。

歩合制であるあたしの収入も、この男の双肩にかかっているのだ。



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