エクスタシー 2 〜極貧のオンナ?〜
私は立ち止まって可奈子を振り返った。

「いい? 沢井さん。乗務中はとにかく目立たないこと」

「はぁ……」

可奈子は不思議そうな顔をしている。

本当はフライトの間中、このぼんやり娘をバンク(乗務員用の休憩室)に監禁しておきたいぐらいだ。

「どんなにデキるCAでも、出る杭は打たれるの。それがこの業界なの」

―――そう。あたしみたいにね。

「撃たれる……。こ、怖い世界なんですね」

やっとわかってきたらしい。

「ところで先輩、『デル食い』って、なんですか?」

「は?」

「私、帰国子女なんですよぉ。四字熟語とかダメなんです」

―――どこが四字熟語だ。

「ことわざだけど」


「そっかぁ」

テヘッと、自分の頭を叩く真似。

―――ダメだ。野放しに出来ない。
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