エクスタシー 2 〜極貧のオンナ?〜
泣き顔になったハードメイクの金太郎。

鏡の中の自分は見るに耐えない。

タケルはダイニングチェアを洗面台の前に持ってきて自分の方に向け、
「座ってみ」
と言った。

お説教でもされるのかと思ったら、彼は黙ってクレンジングローションの瓶を手に取った。

そのローションをコットンになじませ、私が塗りたくったコスメをゆっくり丁寧に落としていく。

優しい感触に、落ち込んでいた気持ちが癒されていく気がした。

「ホストって生き物はなぁ」

一度落とした下地クリームを再び手の平に絞りだしながら、タケルが静かに話し始めた。

「どんなにルックスの悪い女でも、どんなに性格の悪い女でも、目に見えないぐらいちっちゃな美点を見つけて褒めたたえることができるんだ」

それは画廊でのタケルを見ていればわかるような気がした。

「誉められ慣れてる性格のいい美人には、まだ本人が気づいてないような長所を見つけて教えてもやれる」

「ふ、ふうん……」

「わざと冷たくしたり、横柄に振る舞ったりするホストも、必ずどこかで甘いことを囁いてそのギャップで女を惹き付ける」

「そ、そうなんだ……」

タケルがホストの話をするのは初めてのことだった。
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