花の園のお姫様






滑らかに走っていくリムジンのなかでドキドキしながら景色を眺めていると、美樹さんは私の前に人差し指を付き出して真剣な顔で話し始めた。




「いいですか、優様。

まず貴方が気を付けなくてはならないのは絶対に相手に正体がバレないようにすること。

そして、自分の身は自分で守ること。

男の人の前で可愛く振る舞ってはいけません。」



「わかってますよぉ!こう見えて私、剣道三段、柔道だって黒帯なんだから!

襲われたって一発でやっつけちゃいますよ!」



私は空手のポーズをとってニヤリと笑う。



「それに私、可愛くしたことなんて一度もないもん。」


私が自信満々に言うと、




「私の言っている意味が
わかっておられないのですね...」



と溜息をつかれてしまった。



そしてボソッと



「まったく、無自覚なんだから...」



と言われたことを私は聞き取ることができなかった。










< 12 / 52 >

この作品をシェア

pagetop