花の園のお姫様


目の前には苦しそうに顔を歪めた東條先生がいた。


「優...」


と小さく呟いたかと思うと、
私の目の前は真っ暗になった。




え...?




唇には、柔らかくて温かい感触があった。










ち、ちょっと待って、




今私、キスされてる!?


なんで!?

どうして!?


ていうか私のファーストキス!!!



さっきまでのロマンチックな雰囲気はどこかに吹っ飛んで、私の頭の中は今の状況を理解するためにぐるぐると回った。





ゆっくりと彼の唇が離れて行く。



同時に彼のぬくもりも消えて、



私の唇は秋のサラリとした風に冷やされていった。





「う、あ、ご...ごめん。」



東條先生は目を白黒させながら
自分の口を抑える。



途端に恥ずかしくなった私は、



「....わ、私のファーストキス、返せぇ!!!!」



と叫びながら、気が付くと握り締めた拳で東條先生の綺麗な顔を殴っていた。




「ぐはっッ」




ドサッと地面に大の字になってしまった先生を置いて、私は寮の中へ走り去ってしまったのだった。










< 49 / 52 >

この作品をシェア

pagetop