花の園のお姫様
目の前には苦しそうに顔を歪めた東條先生がいた。
「優...」
と小さく呟いたかと思うと、
私の目の前は真っ暗になった。
え...?
唇には、柔らかくて温かい感触があった。
ち、ちょっと待って、
今私、キスされてる!?
なんで!?
どうして!?
ていうか私のファーストキス!!!
さっきまでのロマンチックな雰囲気はどこかに吹っ飛んで、私の頭の中は今の状況を理解するためにぐるぐると回った。
ゆっくりと彼の唇が離れて行く。
同時に彼のぬくもりも消えて、
私の唇は秋のサラリとした風に冷やされていった。
「う、あ、ご...ごめん。」
東條先生は目を白黒させながら
自分の口を抑える。
途端に恥ずかしくなった私は、
「....わ、私のファーストキス、返せぇ!!!!」
と叫びながら、気が付くと握り締めた拳で東條先生の綺麗な顔を殴っていた。
「ぐはっッ」
ドサッと地面に大の字になってしまった先生を置いて、私は寮の中へ走り去ってしまったのだった。