ソリューションby君にスイートな運命を
5.ミシェルの綻びの理由
が、あたしはハッとして、歩みを止めた。
「待って、ミシェル!」
あたしの大声に、他の3人から、訝しげな視線を、一斉に向けられた。
「ミシェル、言ったよね?予言の家に行けば、帰る方法がわかる、て。でも、今、直哉には、わかるかも、て、言い直していたよね?どういうこと?」
あたしは一気にまくしたてた。
直哉の咎めるような視線が、ミシェルに向けられた。
「時空での移動は、本来2人が限界なのだ。が、現実に3人でこの世界に来た。初めてのことだ。どこかで何かが、変わってるようだ。すると、今まで当たり前だと思っていたことにも、変化があるかもしれない」
「じゃあ、その予言の家とやらも、あるかどうかも、わからないかもしれないのか?」
直哉が呆れたように聞いた。
「そういう大事なことは、先に言えよ?俺ら、訳わかんないまま、あんたについてるんだぜ?」
「そうだな。すまない。私自身も確証が掴めず、君たちにただ不安を与えるだけなら、と思って、言わなかった」
「あんたさ、一緒に行く、て時点で、俺ら仲間……とまではいかないかもしれないけど、あんたのことわからないし、だけど、これから一緒に何かを始めようという段階で、相手を疑っていたら、正しく進めなくなるぜ?」
直哉は真っ直ぐに、ミシェルを見ながら言った。
「そうだな……。君達には、これからは、良いことも悪いことも、必ず伝える」
あたし達は、ミシェルの言う「悪いこと」に、動揺しなかったと言えば、嘘になる。
でも、進むしかない。
「行く前に、自己紹介をしよう。……それに、私はあんたではない」
ミシェルは直哉を見て、微かに笑った。
直哉は、ハッとした顔をしながらも、口を開いた。
「悪い」
それだけ言うと、唇を噛んでいた。
あたし達は、この状況にストレスを感じているのが、率直な感想だ。
でも、皆で進んでいかないといけない、と、再び意識を強く持った。
「私はミシェル。君達の世界において、300年前にフランスにあらわれた、サンジェルマン伯爵だ。もっとも、ミシェルが正しい名前だが。私はフランスを出ると、次に、この世界に来た。きっかけは……個人的な理由で、今回のことには無関係だ。……平たく言えば、恋人を失ったからだが……」
ミシェルは最後のほうは、弱々しい口調になった。
恋人を失った?失恋かしら?
「私がフラれただけの話で、彼女は、幸せな人生を送った。私は、失恋のショックから立ち直れず、あてもなく時空を旅し、やがてこの世界に来て、フランスにいた時と同じように、錬金術を行いながら、放浪していたところを、国王のルカリオに興味を持たれた」
ミシェルは一息つき、視線を記憶の波に漂わせているようだった。
「ルカリオは、私と同じ年で、幼い頃から、帝王教育ばかり受けて、世間知らずなところもある。同じ年で、書物にしか載っていない錬金術を実際におこなう私のことを、気に入ったようだ。また、私はこの世界の住民ではないから、最初は客扱いされた。だが、ルカリオは私がこの世界の金をいくら作ったところで、受け取らなかった。愛人ばかり作るルイとは違った。ルカリオは、錬金術の弱点を探り、人の心が金の亡者にならないよう、手を打ちたかったようだ。ルカリオは、錬金術に夢中になる私に、人の心は錬金術で動かしきれるものではないことを、時間をかけて教えてくれた」
ミシェルはそこでニヒルに笑い、
「なんで、フランスで一番の金と、名高い名声を得た私が、フラれたか、やっとわかった」
と、言った。
「ルカリオとは長い時間を積み重ねながら、互いに友情を深めてきた。時には金の亡者と罵ってきたルカリオだが、私も彼には、自分の弱さも寂しさも素直に明かせる。愛されて育って、世間知らずなところもあるが、彼といると、心が安らぐ」
あたし達は黙ってミシェルの話を聞いていた。
「ルカリオは、この世界に絶対な必要な国王だ。おっとりしているが、決断が早く、愛を知っている彼は、人の心から依存心を取り除きながら、弱き者をも自立させていく世界を作っている。人の心は弱い。だが、弱さに打ち勝つことで、人は真に強くなる。そういった人間が増えれば、争いのない世界になると願っている。私は、その気持ちにブレがない彼が、大切なのだ」
やがて、最後に声を震わせて言葉を吐いた。
「彼を失うなど、あってはならない。彼の不治の病は、あれは、ただの病ではない。呪いがかかっている。それも強大な。私はそれに対し、責任がある。私がこの世界で錬金術など見せてまわったがために、欲に目がくらんだ邪悪な心を、ルカリオに引き寄せてしまった。だから、必ず、彼を助けたい」
「待って、ミシェル!」
あたしの大声に、他の3人から、訝しげな視線を、一斉に向けられた。
「ミシェル、言ったよね?予言の家に行けば、帰る方法がわかる、て。でも、今、直哉には、わかるかも、て、言い直していたよね?どういうこと?」
あたしは一気にまくしたてた。
直哉の咎めるような視線が、ミシェルに向けられた。
「時空での移動は、本来2人が限界なのだ。が、現実に3人でこの世界に来た。初めてのことだ。どこかで何かが、変わってるようだ。すると、今まで当たり前だと思っていたことにも、変化があるかもしれない」
「じゃあ、その予言の家とやらも、あるかどうかも、わからないかもしれないのか?」
直哉が呆れたように聞いた。
「そういう大事なことは、先に言えよ?俺ら、訳わかんないまま、あんたについてるんだぜ?」
「そうだな。すまない。私自身も確証が掴めず、君たちにただ不安を与えるだけなら、と思って、言わなかった」
「あんたさ、一緒に行く、て時点で、俺ら仲間……とまではいかないかもしれないけど、あんたのことわからないし、だけど、これから一緒に何かを始めようという段階で、相手を疑っていたら、正しく進めなくなるぜ?」
直哉は真っ直ぐに、ミシェルを見ながら言った。
「そうだな……。君達には、これからは、良いことも悪いことも、必ず伝える」
あたし達は、ミシェルの言う「悪いこと」に、動揺しなかったと言えば、嘘になる。
でも、進むしかない。
「行く前に、自己紹介をしよう。……それに、私はあんたではない」
ミシェルは直哉を見て、微かに笑った。
直哉は、ハッとした顔をしながらも、口を開いた。
「悪い」
それだけ言うと、唇を噛んでいた。
あたし達は、この状況にストレスを感じているのが、率直な感想だ。
でも、皆で進んでいかないといけない、と、再び意識を強く持った。
「私はミシェル。君達の世界において、300年前にフランスにあらわれた、サンジェルマン伯爵だ。もっとも、ミシェルが正しい名前だが。私はフランスを出ると、次に、この世界に来た。きっかけは……個人的な理由で、今回のことには無関係だ。……平たく言えば、恋人を失ったからだが……」
ミシェルは最後のほうは、弱々しい口調になった。
恋人を失った?失恋かしら?
「私がフラれただけの話で、彼女は、幸せな人生を送った。私は、失恋のショックから立ち直れず、あてもなく時空を旅し、やがてこの世界に来て、フランスにいた時と同じように、錬金術を行いながら、放浪していたところを、国王のルカリオに興味を持たれた」
ミシェルは一息つき、視線を記憶の波に漂わせているようだった。
「ルカリオは、私と同じ年で、幼い頃から、帝王教育ばかり受けて、世間知らずなところもある。同じ年で、書物にしか載っていない錬金術を実際におこなう私のことを、気に入ったようだ。また、私はこの世界の住民ではないから、最初は客扱いされた。だが、ルカリオは私がこの世界の金をいくら作ったところで、受け取らなかった。愛人ばかり作るルイとは違った。ルカリオは、錬金術の弱点を探り、人の心が金の亡者にならないよう、手を打ちたかったようだ。ルカリオは、錬金術に夢中になる私に、人の心は錬金術で動かしきれるものではないことを、時間をかけて教えてくれた」
ミシェルはそこでニヒルに笑い、
「なんで、フランスで一番の金と、名高い名声を得た私が、フラれたか、やっとわかった」
と、言った。
「ルカリオとは長い時間を積み重ねながら、互いに友情を深めてきた。時には金の亡者と罵ってきたルカリオだが、私も彼には、自分の弱さも寂しさも素直に明かせる。愛されて育って、世間知らずなところもあるが、彼といると、心が安らぐ」
あたし達は黙ってミシェルの話を聞いていた。
「ルカリオは、この世界に絶対な必要な国王だ。おっとりしているが、決断が早く、愛を知っている彼は、人の心から依存心を取り除きながら、弱き者をも自立させていく世界を作っている。人の心は弱い。だが、弱さに打ち勝つことで、人は真に強くなる。そういった人間が増えれば、争いのない世界になると願っている。私は、その気持ちにブレがない彼が、大切なのだ」
やがて、最後に声を震わせて言葉を吐いた。
「彼を失うなど、あってはならない。彼の不治の病は、あれは、ただの病ではない。呪いがかかっている。それも強大な。私はそれに対し、責任がある。私がこの世界で錬金術など見せてまわったがために、欲に目がくらんだ邪悪な心を、ルカリオに引き寄せてしまった。だから、必ず、彼を助けたい」