ソリューションby君にスイートな運命を
7.ドアが開き……
「わかった。……先を急ごう」
直哉はそこで遮り、あたしと菜摘にそれぞれ、自分達のことを話させた。
あたしは、俯き加減の菜摘を気にしながら、
「あたしは鈴木沙奈。同じく高2の17歳。直哉は彼氏で、菜摘は幼馴染」
と、言うと、菜摘も、
「あたしは相田菜摘。沙奈達と同じクラス……」
と、小さな声で言った。
「わかった。じゃあ、行こう。その前に、そのディートを使う。呪文でマラリアを媒介する蚊が日に日に増えて、危ない」
と、ミシェルはあたし達が足元に置いていたレジ袋2つを、両方受け取った。
ミシェルは服のポケットのようなところから、手のひらサイズの丸く白い紙を何枚か出し、
「離れて?」
と、言い、紙に1枚ずつスプレーを吹きかけた。
ミシェルから離れたとはいえ、小さいコンビニ位の広さの敷地では、あまり離れきれたとは言えない。
特有の刺激臭が、かすかに漂ってきた。
「これは、私が作った特殊な紙で、ディートを吸い込んで、揮発させないものになっている。これを、君達、服のポケットにでも入れるか、うまく身に付けてくれ。仮に体に当たっても、害はない」
と、言った。
あたし達はそれぞれ紙を受け取り、あたしと直哉はデニムのポケットに入れたが、菜摘はワンピースで困っていた。
するとミシェルは、首からロザリオのついたネックレスを外し、チェーンの先で紙に穴を開け、紙を通した。
「これを、かけておいてくれればいい」
菜摘は紙が通されたロザリオを見つめ、
「……だって、ロザリオて大切なものじゃないの?」
と、聞いた。
「……ママンのものだから……」
と、ミシェルが呟くと、菜摘は何か言うのを止め、首から下げた。
ミシェルは踵を返すと、ドアの前に立った。
ステンレスの丸いドアノブが回され、ガチャリと音を立てて、ドアが開いた。
一瞬、風が頬を横切った。
ドアの向こうの世界は、夜のようだった。
あたし達はミシェルのあとに続き、足を前に出した。
「夜なの……?」
あたしが聞くと、
「そう。時差ぼけにならないと思う」
と、前を歩いているミシェルが言う。
「……でも、明るい……」
菜摘が呟くと、ミシェルは空に顔を向け、
「星が大きいのと、輝きが強いこと、この2つの効果で、夜でも歩くことに差し障りはない。でも、小さな石や、溝などは見落とすかもしれないから、よく気をつけて……」
と、途中から菜摘を見ながら言った。
「あれだな、山道なんかで、夜の深い闇の中に、時々ポツンポツンと、頼りない街灯が立ってる位だな……」
と、直哉が言う。
あたし達の背後で、ドアが閉まる音がした。
ミシェルがドアノブに手をかけ、鍵をかけている。
「万一、誰かが、ドアを開けたら大変だから」
と、言いながら、ミシェルは鍵をポケットのような箇所に入れた。
あたし達の世界から見た赤い屋根
の記念館は、ここでは水車小屋だった。
水は引かれていない。だいぶ前に持ち主が亡くなり、廃墟になったそうだ。
あたし達の眼前には、草原が広がり、その先には、深い森に覆われた、お城らしきものが見えた。
直哉はそこで遮り、あたしと菜摘にそれぞれ、自分達のことを話させた。
あたしは、俯き加減の菜摘を気にしながら、
「あたしは鈴木沙奈。同じく高2の17歳。直哉は彼氏で、菜摘は幼馴染」
と、言うと、菜摘も、
「あたしは相田菜摘。沙奈達と同じクラス……」
と、小さな声で言った。
「わかった。じゃあ、行こう。その前に、そのディートを使う。呪文でマラリアを媒介する蚊が日に日に増えて、危ない」
と、ミシェルはあたし達が足元に置いていたレジ袋2つを、両方受け取った。
ミシェルは服のポケットのようなところから、手のひらサイズの丸く白い紙を何枚か出し、
「離れて?」
と、言い、紙に1枚ずつスプレーを吹きかけた。
ミシェルから離れたとはいえ、小さいコンビニ位の広さの敷地では、あまり離れきれたとは言えない。
特有の刺激臭が、かすかに漂ってきた。
「これは、私が作った特殊な紙で、ディートを吸い込んで、揮発させないものになっている。これを、君達、服のポケットにでも入れるか、うまく身に付けてくれ。仮に体に当たっても、害はない」
と、言った。
あたし達はそれぞれ紙を受け取り、あたしと直哉はデニムのポケットに入れたが、菜摘はワンピースで困っていた。
するとミシェルは、首からロザリオのついたネックレスを外し、チェーンの先で紙に穴を開け、紙を通した。
「これを、かけておいてくれればいい」
菜摘は紙が通されたロザリオを見つめ、
「……だって、ロザリオて大切なものじゃないの?」
と、聞いた。
「……ママンのものだから……」
と、ミシェルが呟くと、菜摘は何か言うのを止め、首から下げた。
ミシェルは踵を返すと、ドアの前に立った。
ステンレスの丸いドアノブが回され、ガチャリと音を立てて、ドアが開いた。
一瞬、風が頬を横切った。
ドアの向こうの世界は、夜のようだった。
あたし達はミシェルのあとに続き、足を前に出した。
「夜なの……?」
あたしが聞くと、
「そう。時差ぼけにならないと思う」
と、前を歩いているミシェルが言う。
「……でも、明るい……」
菜摘が呟くと、ミシェルは空に顔を向け、
「星が大きいのと、輝きが強いこと、この2つの効果で、夜でも歩くことに差し障りはない。でも、小さな石や、溝などは見落とすかもしれないから、よく気をつけて……」
と、途中から菜摘を見ながら言った。
「あれだな、山道なんかで、夜の深い闇の中に、時々ポツンポツンと、頼りない街灯が立ってる位だな……」
と、直哉が言う。
あたし達の背後で、ドアが閉まる音がした。
ミシェルがドアノブに手をかけ、鍵をかけている。
「万一、誰かが、ドアを開けたら大変だから」
と、言いながら、ミシェルは鍵をポケットのような箇所に入れた。
あたし達の世界から見た赤い屋根
の記念館は、ここでは水車小屋だった。
水は引かれていない。だいぶ前に持ち主が亡くなり、廃墟になったそうだ。
あたし達の眼前には、草原が広がり、その先には、深い森に覆われた、お城らしきものが見えた。