夢幻の魔術師ゲン
「出血の割に傷は浅い。……あんた、運がいいね」
「……あの……ありがとう。助けてくれて……」
どんな方法を使ったのかは分からないが、あのおぞましい化け物を追い払ってくれたのは紛れもなくこの少年だ。
ステラは心から感謝した。
「礼は、別にいい。たまたま通りかかっただけだから。……それよりも」
少年はじっとステラの顔を凝視する。
綺麗すぎる顔に見つめられてたじろいだが、次の瞬間、少年は呆れたように口を開いた。
「あんた、こんな時間にこんな場所で何をしていたんだ? 魔を引き寄せやすい体質の人間が、深夜なんかに外を出歩くと碌な目に合わないよ」
「え、体質? ……いや、私はただ……」
ライルの尾行をしていて、行先を突き止めたはいいが助けようとしたあげく逆に捕まり今に至る……という間抜けな話を少年にしても仕方がないので、考えた末、あからさまに怪しい嘘をステラは言う。
「散歩、していたの」
「……………………へぇ、そう」
見え透いた嘘にさらに呆れたのか、少年はくすりと笑った。
「なっ、何よその目。ていうか、あなたも人のこと言えないでしょ? どう見たって私と同じくらいの年齢よね? じゃ、お互いさまよ。深夜に外出していたからって咎めないで」
「別に咎めはしないよ。あんたの勝手だからね。俺が言いたいのは……」
少年は口元に笑みを浮かべる。
すると、ひんやりとした彼の手が素早くステラの腕を掴み引き寄せ、互いの鼻が触れるくらいの距離まで迫った。
「ひあっ……」
「あんたのように祓う術を持たず、魔を引き寄せ魔に力を与えるだけの存在は、奴らにとって喉から手を出すほど美味そうに見えるんだよ。極上の餌と言うべきかな」
「え、餌ぁっ? 何を言って……」
「さっきのように、あんたを欲しがる連中がいるってことさ。あんたの場合、夢が現に現れている。……あんた、悪夢を見ているだろ」
ステラは目を見開いた。
「え……なん、で……」
見透かされている。
そう思わずにはいられない。
「……あの……ありがとう。助けてくれて……」
どんな方法を使ったのかは分からないが、あのおぞましい化け物を追い払ってくれたのは紛れもなくこの少年だ。
ステラは心から感謝した。
「礼は、別にいい。たまたま通りかかっただけだから。……それよりも」
少年はじっとステラの顔を凝視する。
綺麗すぎる顔に見つめられてたじろいだが、次の瞬間、少年は呆れたように口を開いた。
「あんた、こんな時間にこんな場所で何をしていたんだ? 魔を引き寄せやすい体質の人間が、深夜なんかに外を出歩くと碌な目に合わないよ」
「え、体質? ……いや、私はただ……」
ライルの尾行をしていて、行先を突き止めたはいいが助けようとしたあげく逆に捕まり今に至る……という間抜けな話を少年にしても仕方がないので、考えた末、あからさまに怪しい嘘をステラは言う。
「散歩、していたの」
「……………………へぇ、そう」
見え透いた嘘にさらに呆れたのか、少年はくすりと笑った。
「なっ、何よその目。ていうか、あなたも人のこと言えないでしょ? どう見たって私と同じくらいの年齢よね? じゃ、お互いさまよ。深夜に外出していたからって咎めないで」
「別に咎めはしないよ。あんたの勝手だからね。俺が言いたいのは……」
少年は口元に笑みを浮かべる。
すると、ひんやりとした彼の手が素早くステラの腕を掴み引き寄せ、互いの鼻が触れるくらいの距離まで迫った。
「ひあっ……」
「あんたのように祓う術を持たず、魔を引き寄せ魔に力を与えるだけの存在は、奴らにとって喉から手を出すほど美味そうに見えるんだよ。極上の餌と言うべきかな」
「え、餌ぁっ? 何を言って……」
「さっきのように、あんたを欲しがる連中がいるってことさ。あんたの場合、夢が現に現れている。……あんた、悪夢を見ているだろ」
ステラは目を見開いた。
「え……なん、で……」
見透かされている。
そう思わずにはいられない。