夢幻の魔術師ゲン
クロスティアの秘密
「ステラ様、起きていらっしゃいますか?」
扉をノックする音と声に気が付き、ステラはゆっくりと瞼を開いた。
わずかに開いた窓の隙間から風が流れ込み、白のカーテンを揺らしている。
この場所はどこで、今は何時だろう。
虚ろな思考の中で、ステラはぼんやりとそんなことを考えていた。
グローナにある叔父の屋敷にやって来て、荷物の整理をして、気が付けば夜になって、眠れなくなり外に出て、それから……。
「――っ!」
昨夜の出来事を思い出したステラは上体を勢いよく起こした。
辺りをよくよく見まわして、ここが叔父に借りた自分の部屋だと分かる。
「あれ……?」
おかしい。
確か昨晩、どこかの路上で少年に会ったはずなのだ。
黒い髪、黒い服、翡翠色の双眸の綺麗すぎる少年に。
化け物から助けてくれて、怪我の手当てをしてもらって、あれから一体どうなったのだろう。
思い出せば思い出そうとするほど訳が分からない。
ステラは自分の右肩を見た。そこには布が巻かれている。
かすった程度だったが銃弾で撃たれたのだ。
初めて体験する恐怖だった。できれば二度と銃などで撃たれたくない。
布を取り外すと出血はすっかり治まり薄い跡が残っているだけだった。
「クロスティア……」
囁かれたあの言葉が無意識に口から出た。
あの少年の性だろうか。
あるいは、グローナにあるどこかの地名や建造物の名前だろうか。
不可解な事柄に頭を悩ませたくなる思いで考え込んでいると、先ほどの声の主が、もう一度ステラの名を呼んだ。
「ステラ様、朝食の時間でございます。起きていらっしゃいますか?」
「あっ……はい」
「では、失礼いたします」
扉をノックする音と声に気が付き、ステラはゆっくりと瞼を開いた。
わずかに開いた窓の隙間から風が流れ込み、白のカーテンを揺らしている。
この場所はどこで、今は何時だろう。
虚ろな思考の中で、ステラはぼんやりとそんなことを考えていた。
グローナにある叔父の屋敷にやって来て、荷物の整理をして、気が付けば夜になって、眠れなくなり外に出て、それから……。
「――っ!」
昨夜の出来事を思い出したステラは上体を勢いよく起こした。
辺りをよくよく見まわして、ここが叔父に借りた自分の部屋だと分かる。
「あれ……?」
おかしい。
確か昨晩、どこかの路上で少年に会ったはずなのだ。
黒い髪、黒い服、翡翠色の双眸の綺麗すぎる少年に。
化け物から助けてくれて、怪我の手当てをしてもらって、あれから一体どうなったのだろう。
思い出せば思い出そうとするほど訳が分からない。
ステラは自分の右肩を見た。そこには布が巻かれている。
かすった程度だったが銃弾で撃たれたのだ。
初めて体験する恐怖だった。できれば二度と銃などで撃たれたくない。
布を取り外すと出血はすっかり治まり薄い跡が残っているだけだった。
「クロスティア……」
囁かれたあの言葉が無意識に口から出た。
あの少年の性だろうか。
あるいは、グローナにあるどこかの地名や建造物の名前だろうか。
不可解な事柄に頭を悩ませたくなる思いで考え込んでいると、先ほどの声の主が、もう一度ステラの名を呼んだ。
「ステラ様、朝食の時間でございます。起きていらっしゃいますか?」
「あっ……はい」
「では、失礼いたします」