夢幻の魔術師ゲン
快晴の空の下。
朝食、昼食を済ませたステラは、メイドのベルにグローナを散策してくると言い残して一人屋敷を出発した。
目的は当然クロスティア。
もちろん、グローナの町のどこに何があるかを知り、早く慣れたいという意図もある。
市場の場所、学校の場所、駅の場所、街のシンボルである鐘楼の場所などを改めて知りたかったので、レンガ造りの独特な街並みを眺めながらステラは上機嫌で歩いていた。
市場では多くの買い物客とすれ違い、各々の店には新鮮な海の幸、鳥や豚肉、果物、また大小さまざまなアクセサリーや工芸品など、人々を呼び込むために工夫された品々が数多く存在していた。
中には骨董品に混じって怪しく不気味な人形が置かれていたりするなど個性的な店がいくつかあったが、さまざまな店の中でステラが惹かれたのは、甘い匂いの漂う菓子店だった。
果物をたっぷり使ったケーキなどの生菓子やクッキー、ワッフルなど、見た目でも楽しめる菓子店にはすでに行列ができており、自然に惹かれたステラは列の中に並んだ。
(おばさま、甘いものが好きって言っていたから、買って帰ろう)
ラグナにも菓子店があったが、廃れていると言うべきか、見栄えもさることながら正直味も、微妙と言うよりはまずかった。
行列なんてできることはほとんどなかったように思えるので、家二軒分の長さはある行列ができるこの菓子店はかなり期待できるだろう。
列に並ぶこと数分。道行く人々を眺めながら順番を待っていると、ステラの前に並ぶ中年夫婦がひそひそと小声で、何やら重苦しい雰囲気で話し始めた。
「あんた、聞いたかい? 昨日の夜遅くに、また例の屋敷で叫び声が聞こえたそうだよ」
ぶるっと身を震わせた女が、ため息交じりに言った。
「本当か? ここ一か月ほどは何の音沙汰もなかったように思えたが……またとはなあ」
「噂じゃ、あの屋敷に入った人間は戻ってこないとか。中に住んでいるのは化け物だと言われているようだけど……どうなのかねぇ?」
朝食、昼食を済ませたステラは、メイドのベルにグローナを散策してくると言い残して一人屋敷を出発した。
目的は当然クロスティア。
もちろん、グローナの町のどこに何があるかを知り、早く慣れたいという意図もある。
市場の場所、学校の場所、駅の場所、街のシンボルである鐘楼の場所などを改めて知りたかったので、レンガ造りの独特な街並みを眺めながらステラは上機嫌で歩いていた。
市場では多くの買い物客とすれ違い、各々の店には新鮮な海の幸、鳥や豚肉、果物、また大小さまざまなアクセサリーや工芸品など、人々を呼び込むために工夫された品々が数多く存在していた。
中には骨董品に混じって怪しく不気味な人形が置かれていたりするなど個性的な店がいくつかあったが、さまざまな店の中でステラが惹かれたのは、甘い匂いの漂う菓子店だった。
果物をたっぷり使ったケーキなどの生菓子やクッキー、ワッフルなど、見た目でも楽しめる菓子店にはすでに行列ができており、自然に惹かれたステラは列の中に並んだ。
(おばさま、甘いものが好きって言っていたから、買って帰ろう)
ラグナにも菓子店があったが、廃れていると言うべきか、見栄えもさることながら正直味も、微妙と言うよりはまずかった。
行列なんてできることはほとんどなかったように思えるので、家二軒分の長さはある行列ができるこの菓子店はかなり期待できるだろう。
列に並ぶこと数分。道行く人々を眺めながら順番を待っていると、ステラの前に並ぶ中年夫婦がひそひそと小声で、何やら重苦しい雰囲気で話し始めた。
「あんた、聞いたかい? 昨日の夜遅くに、また例の屋敷で叫び声が聞こえたそうだよ」
ぶるっと身を震わせた女が、ため息交じりに言った。
「本当か? ここ一か月ほどは何の音沙汰もなかったように思えたが……またとはなあ」
「噂じゃ、あの屋敷に入った人間は戻ってこないとか。中に住んでいるのは化け物だと言われているようだけど……どうなのかねぇ?」