夢幻の魔術師ゲン
「俺がまだ十の時だ。肝試しに、友達と二人で夜あの屋敷に入ったんだよ。そしたら……」
「そしたら……なんだい?」
「今でもはっきりと覚えてるんだが……その、人が倒れていた。目を見開きながら泡を吹いていたんだ」
「ひっ」
「これは絶対死んでると思って、屋敷を出ようと俺は叫びながら走ったんだよ。でも出口で誰かにぶつかったんだ。顔をあげたらやけにきれいな顔立ちの男がいた。今思えば小僧っ子だったがな。……そいつが俺に言ったんだ。『魔は祓い切れていない。誰かに口外すればお前たちは死ぬ』って……。ああ、くそ。思い出しただけで身の毛がよだつ」
男の腕は鳥肌が立っていた。
それをさすりながら言う男に、女は同情して彼の手を握る。
「よくそんな度胸があったねぇ。それで、あんたは誰かに言ったのかい?」
「言えるわけねえだろ。今だから言えるがあの時は本当にビビッて、一週間おふくろの布団に潜りこんだんだ。以来俺はあそこに近づかねえと決めたのさ。全く、クロスティアだか何だか知らないが、あんな屋敷さっさと取り壊しちまえってもんだ」
「ああっ、馬鹿。あんた、声がでかいよ」
夫の言動を静止した女は、慌てて辺りを見回した。
しかし、時すでに遅し。
彼らの会話をすべてにばっちり耳を傾け情報を入手したステラは、次なる情報を手に入れるべく彼らに話しかける。
「あの……今の話、本当ですか?」
「はいぃっ? な、何を言っているのかしら?」
いきなり話しかけられ、振り向いた女の声は明らかに裏返っていた。
話を聞かれたことに動揺した夫婦は、ステラから目をそらす。
「私、クロスティアって場所を探しているんです。オジサンたちの話からすると屋敷の名前ですよね。場所、教えていただけませんか? ―――むぐっ」
堂々と喋るステラの口元を女は慌てて塞いだ。
「お、お、お譲ちゃん。滅多な事を言うもんじゃないよ。あそこを探すなんて……あそこには近づかないほうが身のためさ」
「そそそ……そうだぞ。あぁ~喋りすぎた。……君、大体どうしてク……クロ……スティア邸の場所を知りたいんだ?」
身震いしながら尋ねた男だが、ステラはあっけからんとして返答する。
「えーと、クロスティア邸の近くに親戚の家があるんです。でも私、この街に初めて来たから場所が分からなくて。クロスティア邸がどこにあるのか、街の人に聞けば絶対分るって言われたのですけど……」
「そしたら……なんだい?」
「今でもはっきりと覚えてるんだが……その、人が倒れていた。目を見開きながら泡を吹いていたんだ」
「ひっ」
「これは絶対死んでると思って、屋敷を出ようと俺は叫びながら走ったんだよ。でも出口で誰かにぶつかったんだ。顔をあげたらやけにきれいな顔立ちの男がいた。今思えば小僧っ子だったがな。……そいつが俺に言ったんだ。『魔は祓い切れていない。誰かに口外すればお前たちは死ぬ』って……。ああ、くそ。思い出しただけで身の毛がよだつ」
男の腕は鳥肌が立っていた。
それをさすりながら言う男に、女は同情して彼の手を握る。
「よくそんな度胸があったねぇ。それで、あんたは誰かに言ったのかい?」
「言えるわけねえだろ。今だから言えるがあの時は本当にビビッて、一週間おふくろの布団に潜りこんだんだ。以来俺はあそこに近づかねえと決めたのさ。全く、クロスティアだか何だか知らないが、あんな屋敷さっさと取り壊しちまえってもんだ」
「ああっ、馬鹿。あんた、声がでかいよ」
夫の言動を静止した女は、慌てて辺りを見回した。
しかし、時すでに遅し。
彼らの会話をすべてにばっちり耳を傾け情報を入手したステラは、次なる情報を手に入れるべく彼らに話しかける。
「あの……今の話、本当ですか?」
「はいぃっ? な、何を言っているのかしら?」
いきなり話しかけられ、振り向いた女の声は明らかに裏返っていた。
話を聞かれたことに動揺した夫婦は、ステラから目をそらす。
「私、クロスティアって場所を探しているんです。オジサンたちの話からすると屋敷の名前ですよね。場所、教えていただけませんか? ―――むぐっ」
堂々と喋るステラの口元を女は慌てて塞いだ。
「お、お、お譲ちゃん。滅多な事を言うもんじゃないよ。あそこを探すなんて……あそこには近づかないほうが身のためさ」
「そそそ……そうだぞ。あぁ~喋りすぎた。……君、大体どうしてク……クロ……スティア邸の場所を知りたいんだ?」
身震いしながら尋ねた男だが、ステラはあっけからんとして返答する。
「えーと、クロスティア邸の近くに親戚の家があるんです。でも私、この街に初めて来たから場所が分からなくて。クロスティア邸がどこにあるのか、街の人に聞けば絶対分るって言われたのですけど……」