夢幻の魔術師ゲン
“夢”のはじまり
アスティア王国最南部、グローナ。
エメラルドグリーンの輝きを放つ、美しい海が間近に見えるこの街に向かって、本日何度目かになる汽車が蒸気を上げながら、北西よりその姿を現した。
汽車の速度が徐々に落ちグローナの駅に到着すると、ホームには長旅を終えた人々や汽車に乗ろうと待ちわびる人々で溢れかえる。
そんな中、大きな荷物を抱えて下車した少女は、長時間汽車に乗って固くなった肩をほぐそうと、うんと背伸びをした。
「やっと着いたぁ。さて……迎えがあるはずなんだけど……」
人混みの奥へと目を凝らしながらとある人物を探していると、ふと遠くから大きく手を振って、少女の名前を呼びながらこちらに向かって来る一人の男の姿が目に映った。
「おーい、ステラちゃーん」
「あっ……おじさま」
見知った顔を見つけたステラは、満面の笑みをこぼして手を振り返す。
少しばかり息を切らしてやって来た50代半ばの紳士に、ステラは思い切り抱きついた。
「ファウロおじさま、こんにちは!」
「はっはっは。よく来たねぇ、ステラちゃん。相変わらず本当に綺麗だ」
ステラの姿をざっと眺めた彼女の叔父は、嬉しさに胸を踊らせて微笑んだ。
背中まであるウェーブがかかった茶髪と、シンプルな青のドレスに身を包んだステラの姿はまだ多少のあどけなさが残るものの、人形のように愛らしい容貌を持つ彼女は、誰が見ても目を奪われるほどの美しさなのだ。
あいさつ代わりの抱擁を解くと、叔父は少々疲れ気味のステラに労いの言葉をかける。
「いやぁ、それにしてもステラちゃん、長旅本当にご苦労だったね。ラグナからここまで来るのに大変だっただろう。丸一日ほどかかったんじゃないのかい?」
「ええ。でも疲れはしましたけど、来た甲斐はあるなって思います。グローナの街並みも海も、噂通り本当に美しいですね」
「ふむ。それがグローナの長所だからね。……さて、積もる話もあるだろうが、ひとまず家に向かおうか。馬車を待たせてあるからね」
「はい」
案内され、ステラは叔父の後について行く。
駅を出ると馬車にのり、馬車はグローナの中心街をゆっくり進み始めた。
ところ狭しに並ぶレンガ造りの家々は、屋根の形が特徴的で階段のよう。
この地方独特の建築物はもちろん、綺麗に整備された水路は水が青く透き通り、道行く人々は皆華やかで、田舎育ちのステラを何もかも圧倒させた。
故郷ラグナを出発してからおよそ1日。
アスティア王国の北部に位置するその小さな村は、汽車など1日に2本出れば良い方で、ステラが乗ろうとした汽車は予定より数時間遅れて到着した。
また、ラグナからグローナまで直接続く汽車はなく、途中の駅で乗り換えをいくつかしなければならない。
そもそも汽車に乗った経験が少ないステラにとって、グローナまでの道のりは常に緊張しっぱなしだったのだ。
けれど、ステラは今こうしてここにいる。
絶景が立ち並ぶこの美しい街で、新しい生活が始まるのだ。
エメラルドグリーンの輝きを放つ、美しい海が間近に見えるこの街に向かって、本日何度目かになる汽車が蒸気を上げながら、北西よりその姿を現した。
汽車の速度が徐々に落ちグローナの駅に到着すると、ホームには長旅を終えた人々や汽車に乗ろうと待ちわびる人々で溢れかえる。
そんな中、大きな荷物を抱えて下車した少女は、長時間汽車に乗って固くなった肩をほぐそうと、うんと背伸びをした。
「やっと着いたぁ。さて……迎えがあるはずなんだけど……」
人混みの奥へと目を凝らしながらとある人物を探していると、ふと遠くから大きく手を振って、少女の名前を呼びながらこちらに向かって来る一人の男の姿が目に映った。
「おーい、ステラちゃーん」
「あっ……おじさま」
見知った顔を見つけたステラは、満面の笑みをこぼして手を振り返す。
少しばかり息を切らしてやって来た50代半ばの紳士に、ステラは思い切り抱きついた。
「ファウロおじさま、こんにちは!」
「はっはっは。よく来たねぇ、ステラちゃん。相変わらず本当に綺麗だ」
ステラの姿をざっと眺めた彼女の叔父は、嬉しさに胸を踊らせて微笑んだ。
背中まであるウェーブがかかった茶髪と、シンプルな青のドレスに身を包んだステラの姿はまだ多少のあどけなさが残るものの、人形のように愛らしい容貌を持つ彼女は、誰が見ても目を奪われるほどの美しさなのだ。
あいさつ代わりの抱擁を解くと、叔父は少々疲れ気味のステラに労いの言葉をかける。
「いやぁ、それにしてもステラちゃん、長旅本当にご苦労だったね。ラグナからここまで来るのに大変だっただろう。丸一日ほどかかったんじゃないのかい?」
「ええ。でも疲れはしましたけど、来た甲斐はあるなって思います。グローナの街並みも海も、噂通り本当に美しいですね」
「ふむ。それがグローナの長所だからね。……さて、積もる話もあるだろうが、ひとまず家に向かおうか。馬車を待たせてあるからね」
「はい」
案内され、ステラは叔父の後について行く。
駅を出ると馬車にのり、馬車はグローナの中心街をゆっくり進み始めた。
ところ狭しに並ぶレンガ造りの家々は、屋根の形が特徴的で階段のよう。
この地方独特の建築物はもちろん、綺麗に整備された水路は水が青く透き通り、道行く人々は皆華やかで、田舎育ちのステラを何もかも圧倒させた。
故郷ラグナを出発してからおよそ1日。
アスティア王国の北部に位置するその小さな村は、汽車など1日に2本出れば良い方で、ステラが乗ろうとした汽車は予定より数時間遅れて到着した。
また、ラグナからグローナまで直接続く汽車はなく、途中の駅で乗り換えをいくつかしなければならない。
そもそも汽車に乗った経験が少ないステラにとって、グローナまでの道のりは常に緊張しっぱなしだったのだ。
けれど、ステラは今こうしてここにいる。
絶景が立ち並ぶこの美しい街で、新しい生活が始まるのだ。