夢幻の魔術師ゲン
『……ラ……………ステラ……』

 恐ろしく冷たく、深みのある声音で、誰かが自分の名前を呼んだ。

 暗闇の中で、ステラはそこに一人佇んでいる。

 そこで聞こえてくるのは、誰のものとも分からない聞き慣れた声。

 頭の奥底に話しかけてくる。

『だれ……?』

『もうすぐだ、ステラ……。もうすぐ、迎えに行くよ……』

『迎え……? なぜ……?』

 問いかけたステラの言葉には答えず、辺りに広がる闇の狭間から、ぼんやりと淡く白い光が瞳に映った。

『お父さん……お母さん……?』

 影で顔が隠れ、はっきり見えない。

 だがその背格好、雰囲気は、紛れもなくステラの両親のものだ。

 失ったはずの両親。

 あぁ、戻って来てくれたのだ。
 
 だから、こうして目の前にいる。

『お父さん、お母さん! 良かった、生きていたのね。私……』

 だが、歓喜に満ち溢れたのもつかの間、影で隠れていた両親の顔があらわになった瞬間、ステラの体は恐怖で震えた。

『あっ……』
< 7 / 28 >

この作品をシェア

pagetop