ほんとは優しい私のオオカミ ①
蓮「その事件から母はなんとか立ち直って数ヶ月たったある日妊娠が発覚した。母は夫との子だと信じ俺を産んだ…でも、俺の髪の色を見て絶望しただろうね。」
自分の髪を悲しそうにギュッと握る。
まさか…。
蓮「そ。俺は母が強姦された外人との間の子供だった。それでも、必死に愛そうとしてくれていた。」
蓮「でも、母の夫が突然姿を消した。逃げたんだ。それで、母は精神を病んでしまって…。」
ギュッと目をつぶる蓮。
きっと、その時のお母さんの姿を思い出しているんだろう。
蓮「ある日、母が電車で何駅ものりついで俺をこの街に連れてきた。6歳のときだった…母は俺に待ってるように言うとすぐにどこかへ行ってしまって。ちょうど今日みたいに雪が振り始めて」
手のひらに落ちた雪の結晶を見つめる。
雪はすぐに蓮の体温で雫へと変わる。
蓮「何十分、何時間まっても母さんが戻ってこないから俺はまだ知らないこの街中探し回ったんだ…それでもいなくてまだ小さかった俺は家の場所も電車をいくつ乗ったのかもわからなくて、寒くて寒くて独りで…。」