ほんとは優しい私のオオカミ ①
瑠奈「…うぅ…いや、…やめて…」
瑠奈の声で現実に戻される。
瑠奈はひどくうなされているようだった。
翔「瑠奈…大丈夫だ。俺がついてる」
優しく髪を撫でてやると少しホッとしたように表情が緩んだ。
いったい瑠奈はどこからきたのか。どういう境遇だったのか。
口には出せない分、よけいに気になってしまう。
くそっ。
詮索はよくない。
今はその時期ではない。
今日の出来事で瑠奈と俺との間にある壁が果てしないようなものに思えた。
明日も咲と会わなければならないと思うと気が重かった。
ずっと、夜ならいいのに…。
それなのに、時間は止まってはくれない。
いつしか時計は7時を指し、朝日が眩しかった。
俺は決意を決めもう1度瑠奈を見ると、シャワーを浴び着替えて部屋を出た。
咲に会いに行くために。