ほんとは優しい私のオオカミ ①
自分で言って自分で傷つく。
でも、翔はもっと苦しそうな顔をしていた。
翔「…違う。違うんだ。…俺は、咲なんか…」
途切れ途切れ、つぶやく翔。
まるで言葉を紡ぐのにひどく躊躇しているようだ。
翔「俺が好きなのはっ!咲じゃなくてっ…っ」
瑠奈「…え?」
ぐいっと強い力で翔に引き寄せられ気づいた時はもうすでに、唇が重なっていた。
数秒しかたってないはずのその時間がとても長く感じた。
唇をそっと離すと、最後に翔はもう1度「悪い」といいバルコニーから立ち去った。
…今、キスした?
喜んでいいのか、悲しむべきなのかはわからなかった。
ただ、1つどうしてという気持ちだけがあった。