ナツ恋。
お兄さんは慣れた様子で近くまで来た。
離れてたから気づかなかったけど、すごく顔立ちが整ってる。
思わず見入ってしまっていた。
「あれ、この子は…」
お兄さんは私に目を向けて不思議な顔をした。
「あ…えっと」
とっさのことで言葉が上手く出てこない。
「この子はわしらの孫娘。わけあってな、これからこっちで暮すんや」
「そうだったんですか、それはいいですね。賑やかになりそうだ」
お兄さんは爽やかに笑って見せた。
「はじめまして、有馬 柊哉です。この先にある農家の息子だよ。と言っても、ここに住んでいるほとんどの人は農家だけどね」
「えっと、日野 夏香です」
「……」
「あの?」
「いや、いい名前だなって。夏にぴったりな」
そう言ってまたふわりと笑った。