ナツ恋。
それを聞いたおじいちゃんは得意げな顔をした。
「この子の名前はわしがつけたんや。夏が香るって書いてな、そりゃどんだけ悩んだことか…」
「おじいちゃん、初耳だよ」
「む、そやったか」
そうだよ!初めて聞いた。
私の名前、おじいちゃんがつけてくれたものだったんだ。
「日がある野に夏が香る…ですか。すごいや、繋がってるんですね」
「苗字は偶然やなぁ。この子の親が離婚するまで、苗字はちゃうかった」
「えっ」
ぱっと私を見た柊哉さんの目が戸惑いの色を映した。
「あ、全然大丈夫です。私ここに来られて嬉しいし、楽しいから」
「…そっか。その話し方だと、都会から来たんだよね?ここ、何もないけど楽しいの?」
「うん。都会にはないものがいっぱいあるから」
事実、昨日からずっと楽しい。
ここには私の知らないものがたくさんある。