嫌われたがりと天邪鬼 完
「で、何の会話してたの?」
「美由紀の幼馴染みが残念だって話」
「幼馴染み?…えーと、相川?のこと?」
那智を一瞬見遣り、彼は首を傾げた。そうそう、と頷くのは何故かわたしではなく友人だ。
…何故お前が頷く。
一瞬そんな風に思ったものの、特に自分が答えたかっただとか、そんな不満を抱いたわけではないのでそのままスルーしておく。
「残念って?」
「ルックスは滅茶苦茶いいのに中身が最低だってこと」
「あー…まあ、本当の意味合いで女泣かせだって噂はよく聞くけどね」
苦笑しつつ久世くんは出来るだけ悪い言葉を使わないようにとソフトな言い方で同意の意を示す。
そんなところにも彼の人間性が表れているように思えた。
「あれ噂じゃないし。知り合いが相川に泣かされたもん、実際。あーあ、勿体ないわほんとに」
「あー………」
久世くんはどう言ったらいいか判らないといった様子で苦笑する。彼女は彼女でそんなこと気にしない様子で肩を竦めて軽く首を横に振った。どうやら本気で残念だと思っているらしい。
…そういえば前、那智の外見だけはドンピシャで好みだと言っていたっけ。
それを思い出して胸にモヤモヤとした黒い影が立ち込めるのを感じ、それを誤魔化そうとするかのように片手で持っていたパックをぐしゃりと潰した。