嫌われたがりと天邪鬼 完
那智と一緒に学校に行かなかったのは、それが初めてだった。
それから那智は田中さんと登下校するようになった。ぽっかりと、胸に穴が空いたような、そんな喪失感が拭い切れなかった。
そして、その後「付き合ってくれ」と、別に仲が悪いわけでも嫌いなわけでもない男子からに告白され。
一瞬断りかけたけれど、好きな人がいるわけでもないのに何故断っているのだろうと、わたしは「うん」と頷いた。
***
――それから、那智と田中さんの付き合いは、中学三年の秋ほどまで続いた。中学生にしてはかなり長く続いた方であろう。
最初こそ那智が流されたような形で始まった二人の交際はしかし、付き合っていくほどに那智が田中さんにベタ惚れの状態となっていった。
わたしはといえば、初めて付き合った彼とは二ヶ月も保たず、その後も二、三人と付き合ったけれど、やはり半年保った付き合いはなかった。
何故だろうとは思ったものの、その別れ一回一回にショックを受けることもなく、ただ付き合い別れるを繰り返していた。
…そんな中、田中さんと那智の別れは唐突だった。久し振りに那智からメールが着た、と思って見てみれば、今自分の部屋に来れないかという内容のもの。
付き合い始めてからはわたしを部屋に呼ぶことなんてなかったので、おかしいなとは思ったけれど、とりあえず彼の部屋に向かえば、そこは電気も点いていなくて真っ暗な状態。
驚いて電気を点ければ、彼はまだ制服姿だった。そして床にしゃがみ込んでいて。
「…振られた」ただ一言、それだけをポツリと漏らした。