嫌われたがりと天邪鬼 完



「んー、あんまんの方がいい」

「なら半分こで那智がお金払ってね」

「ええー、そこは美由紀の奢りでしょ」

「何でよ」

「…判ったよ払うよ」



あーあーなんて声を出す割に那智の横顔はいやに楽しげだ。あんまんを想像してテンションが上がっていることがよく判った。

もう高校二年生なのにあんまんぐらいでテンション上がるなんて、と思いつつも、那智が笑うなら何でもいいや、なんて。

そんなことを考えてしまうんだから、救いようがない。


コンビニの自動ドアの前に立った…その時、先にドアが開き、中からカップルであろう男女が出てくる。
仲睦まじげに微笑み合うそのカップルのうちの女の子を見て、

「…あ、」息が止まるかと思った。


髪は伸びていた。知っていたその頃より多少派手な見掛けになっていた。それでも彼女は確かに、



「…あれ?那智!偶然だね!」

「………仁美」



那智を今でも解放しない、解放されようともしない、彼女だった。


彼女は無邪気に笑い、彼氏であろう男子に「誰?」と問われて「中学の同級生!」と答える。
確かに間違ってはいないし、彼氏との間に波風を立たせたくないのも充分理解出来た。…それでも。

一瞬目を見開き苦しげに顔を歪めたあと、取り繕うように無理矢理笑って「久し振り」なんて笑う那智を見て、彼女に対して反発の気持ち持つな、なんて。その方が余程無理な話だ。

ぎゅっと強く那智の手を握るも、握り返されることはなかった。



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