嫌われたがりと天邪鬼 完



「ごめん、こっちの話。…それで、沢木、返事…貰えないかな」

「ああ…うん。ごめん、付き合うことは…出来ないや。気持ちは嬉しいんだけど…ごめん」

「うん。いや、ありがと。スッキリしたしさ」



彼はそう言うと、空を仰いだ。「だと思ったんだよなあ」なんて呟く。
その声に暗いものが混じっていないのは、わたしに気を遣っているのか、それとも本当に彼の言う通りスッキリと清々しい気持ちなのか。

前者も後者もどちらとも言えないな、とわたしは思った。

そしてその暗さの混じらない声のまま、彼は言葉を続ける。



「早く相川ンとこ行ってやれよ、待ってるじゃん」

「え…別にそんなんじゃないよ、きっと」

「いやいや、じゃあ何であんなとこいるんだよって。まさか俺を待ってたとかだったら気持ち悪いじゃん」



ニッと八重歯を見せて彼は笑う。その爽やかな笑みにも、今はどことなく切なさが混じっているような気がした。
――本当に、どうしてこういう人じゃないんだか。

見る目がないんだろうな、と自虐的なことを考えつつ、そうかなと苦笑する。



「そうだよ。…沢木さあ、相川に惚れてるでしょ?」

「…え、そんなに判り易い、の?わたし」



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