嫌われたがりと天邪鬼 完


さっきからバレまくりなんだけど。
思わず真顔になって呟けば、ふはっと彼は吹き出した。沢木って時々面白いよな、なんて失礼極まりない。

そして一瞬だけ…泣きそうな顔をして、「俺ってお人好しだから教えてあげる」と囁くように言葉を紡いだ。



「沢木はさ。いっつも目が追ってるの、相川を。でもその視線が相川から外れたそのちょっと後から、今度は相川が沢木を視線で追ってるんだよね。何でそんなに擦れ違ってンのってくらい、いつもだよ」



たまには視線が絡んでもいいのにね、と彼は言う。その台詞に、今度はわたしが泣きそうになった。

だってそんなことはあるはずないんだ。彼の中でわたしはあくまで『幼馴染み』、『姉貴分』なだけなんだから。



「行ってきなよ。どうせまた擦れ違ってるでしょ」

「…でも、」

「でもじゃないって。ほら、もし俺の思った通りじゃなかったとしても、逃げ場所には俺がいますし?行ってきなって」

「……何で、そんなに後押ししてくれるの、久世くんは」

「え?」



一瞬きょとんとした顔をして、そして彼の顔が優しくほころんだ。嗚呼、なんて綺麗な微笑み方をする人なんだと見惚れるほどに。

そりゃ、と彼は微笑んだまま口を開く。



「沢木と相川が上手く行ったら悔しいし正直すごく嫌だけどさ。…それ以上に俺、沢木が泣いてたら嫌だし。あと、やっぱ恰好付けたいじゃん?」



最後の言葉をおどけたように言う彼。
恰好良いよ、と涙混じりの声で言った。恰好良いよ。充分に。



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