嫌われたがりと天邪鬼 完
 だらり、と僕にのしかかる、その重さは柔らかくて温かかった。顎を引くようにして下を向くと、僕の両膝を割るようにしてその隙間を占拠した幼馴染は、いかにもだらしなくこちらに身体を預けている。時折服が擦れて体勢がずり落ちるような有様で、シャツが持ち上がって白い腹が僅かに覗く、その様子は気怠くはあれど色気は皆無。

 いいのかな、年頃の女の子がこんな恰好で。そうは思うものの、僕も僕でこの体勢は居心地が良く、あんまり落ち着くものだから、何も言わずに彼女の身体へと腕を回しているわけである。まあ、ここが僕の部屋で、他に誰も見る人がいないから、というのも大きな理由の一つだけれど。


「最近のテレビって下衆なことやれば大衆に受けると思ってンでしょうね、どんどんつまんなくなっていってるわ」


 偉そうに批評した彼女は手を伸ばし、テーブルの上に載ったポテトチップスの袋を手探りでがさごそ漁る。まるで怠惰の代名詞のような姿だ。


「美由紀、あんまりテレビなんて見ないくせにさ」


 判るの? なんて冷やかしながら、僕もポテトチップスを漁る。摘まんだそれを口に運べば、食べカスがぱらぱらと下へ落ちたようで、美由紀は「やめてよ」と顔を顰めた。


「批評するだけなら素人にだって出来るの」

「なるほどね。……今のは批評ってよりも、ただ文句付けてるだけって感じだったけど」

「テレビの中にまで文句が聞こえるわけじゃないもの、誰にでも見えるところで露骨に悪口を言わなきゃ別にいいでしょ」
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