兄妹のお話
兄妹
 昔、あるところにルキという少年がいました。彼は森の中で父親と母親と3人で暮らしていました。
 ある夜のこと、少年は小さな物音で目を覚ましました。ベッドから起きあがり、そっとドアに耳を寄せました。それは女の子の声でした。ルキはおそるおそるドアを開けました。すると、ダイニングのテーブルの上に光り輝く何かが見えました。声はその光から出ているようでした。
ルキは先程までの恐ろしさも忘れ、光の元へと近づいていきました。そこにあったのは小さな手鏡で、鏡の中では夜空の星のように美しい少女が歌っていました。美しい光はこの少女から発せられているようでした。

ここは高い山の上 ここは古い魔女のお城
わたしはここよ おにいちゃん
恐い魔女に捕まっているの

歌が終わると、女の子の姿は光とともに消えてしまいました。ルキは手鏡を拾い上げました。所々枠の金属が錆びている汚らしい古い手鏡でした。ただ、持ち手についた、透き通るような緑色の小さな宝石だけが弱々しい光を発していました。
鏡の中の少女は兄を呼んでいましたが、ルキにはそれが自分のことのように思えて仕方ありませんでした。彼は手鏡を自分の肩掛けの鞄にしまいました。それから、テーブルの上のパンを一斤、鞄へ詰め込みました。そして、両親を起こさないようにそっと家の外へ出ていきました。
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