学校一のモテ男といきなり同居
「お前なー。なんだよ、その顔」



あたしが疑ってるの、バレバレだったみたい。



「アハハ……」



「ボーカルスクールの先生すげぇいい先生だし、バンド組んでる仲間も最高のヤツらでさ。

今が俺の一番いいとき。だから、今引っ越しするわけにはいかねーの」



「世界一を目指してるなら、海外デビューすれば?そのための海外転勤なのかも」



早くウチから出て行って欲しいし、そんなイジワルを言ってみた。



てっきり冗談で返されるかと思ったのに、



井上くんは、真剣な表情をしている。








「世界一っていうのは、大げさに言った。今、親父について行ったら……俺は、俺じゃなくなる気がする」



「俺じゃなくなるって……どういうこと?」



学校でもウマくやってるし、井上くんみたいなタイプは、



きっとどこに行ってもウマくやっていける気がするけどなぁ。



「いつも、1からだった……。親父が転勤族で、この高校に入るまで、同じ学校に2年いたことがなかった。

グループができてる中に頑張って入ったと思ったら、また1から。

そのうち処世術を身につけて?だけどまた離れるんだな…と思ったら、いつも本気になれなかった。

だけど……小さい頃に住んでた、ここにまた戻ってきて。仲間と再会して。

今の自分は、このまま継続したいっていうか。やっと、自分の居場所を見つけた気がするんだ」



意外な事実に、あたしはなんて言っていいのかわからなかった。


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