学校一のモテ男といきなり同居
「では、そろそろ失礼するかな。キミのお父さんとここで落ち合う予定にしていたんだが、打ち合わせが長引いているみたいだ」



「あの……」



「なんだい?」



「郁実……くんの夢を、おじさんは知ってますか?」



「夢?ああ……歌手になりたいとか、なんかそういうことを言ってたことがあるな」



「やっぱり、現実的じゃないし、反対してるんですよね……」



思い切って聞いてみると、おじさんはやんわりと笑った。



「別に、反対はしてない。アイツは男だし、やりたいことをやればいいと思うよ」








え……そうなの?



「だったらどうして、無理に連れて行こうとするんですか?」



「別に、ここいなくてもできるだろう?今できることをしながら、夢を追い続ければいい。

海外に住む経験だって、いつかアイツの糧になるはずだから」



「そうかもしれないですけど……」



「夢だけでは食っていけないからな。ただ、夢を追うことだけに人生を賭けるのは、もったいないと言っているんだ。

キミも。ボーッとしている間にも、どんどん時間は過ぎていっているぞ」



うっ……耳が痛い。



郁実のお父さんが言うことは一理あるのかもしれないけど、



だけど、ここにいなきゃできないこともある。



特に郁実は、バンドのメンバーと一緒にデビューしたいって考えているし、



海外に行ってしまったら、その夢はそこで断たれてしまうに違いないよね……。


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