学校一のモテ男といきなり同居
郁実ーーーっ!!って、怒りたいところだけど、今は……傷ついてるはずだから。



こういうときは、そっとしておいた方がいいのかな。



読みかけの小説を取るために部屋に入ったら、郁実がチラリとあたしの方を向いた。



「……親父、まだいる?」



なんだか寂しそうな瞳で、ジッと見ている。



「ううん、帰ったよ。郁実は……どうするの?」



「あー、嫌だ……行きたくねー!!」



あたしの枕を抱きかかえたまま、ゴロンとベッドの上で半回転する。




「けど……一週間後に一緒に……行くんだよね」



確かめるように聞くと、郁実がガバッと起きあがった。









「冗談じゃねー。絶対に、行かない。なんで外国になんか住まなきゃなんねんだよ……俺にはやることがたくさんあるっつの!」



「そうだよね……」



郁実の気持ちはわかるはずなのに、なぜか賛成できない自分がいる。



……こんなんじゃ、あたしの気持ちなんてすぐにバレちゃうよね。



黙ってると、郁実があたしを手招きする。



「なに……?」



「目線、合わせて話そーぜ?」



「えー、またあ?」



そういえば、前にもこんな風に言われたっけ。



あのときは、苦手だった郁実のことを……少し、見直したんだよね。


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