学校一のモテ男といきなり同居
電話を切った郁実は、すぐにあたしの部屋を出ていこうとする。



「……ちょっと!?」



気がつけば、思わず引きとめていた。



さっきまであたしに迫ってたのに、えらくアッサリ引き下がるよね。



まあ、そこはいいとしても、あまりにも引き際が良すぎる。



「……ん?」



郁実は、なんの話?みたく、キョトンとしてあたしを見ている。



「そんなに急いで、どこに行くの?」



「それがな?俺が通ってるボーカル教室に、卒業生の有名アーティストが来てるらしー!!俺、すげー好きでさ。ちょっと行ってくるわ」



あたしとのやり取りをすっかり忘れたかのように、興奮している。



いや……行くのは、いいんだけど。



なにか一言ないわけ?って思ってしまう。



こんな風に思うあたしは、郁実のマイペースさに若干イライラ。










そういえば、コイツってこうだよね。



ミキオくんと付き合うってなったときも、妬けるって言いながら、そのあとはなんでもないように過ごしてたり。



……自分でも、ボーッとしてるって言ってたけど、ここまで忘れっぽいとは。



っていうか、物事に対する執着心がなさすぎ!?



そこで、あたしはおじさんの言葉を思いだした。



< 443 / 978 >

この作品をシェア

pagetop