学校一のモテ男といきなり同居
「嫌だね」



っていう言葉と共に、頬に柔らかい感触。




「……っ!!」




「ギブアンドテイク。歌のお礼、もらってねーから」




いつもの、ちょっとイジワルな郁実があたしの前に戻ってきた。




「やっ……だからって、不意打ちでキスとか、やめてよ」




つい、あたしもいつも通りに反発してしまう。




そう……頬に、チュッてされたの。




ほんの、一瞬の隙に。




嬉しいんだけど、反射的に手の甲で頬を拭ってしまう。



それを見た郁実の眉がピクリと上がった。










「お前……そんなことするか?俺は、バイキンか!」



「そっ……そーかもね。それに、許可なしにキスするとか、男として最低」



「あっそ。そんな最低男に、昨日助けてもらったくせに」



ズキッ。



今の一言で、すっかり忘れていたストーカーのことを、思い出してしまった。



急にあたしの表情が曇ったからか、郁実の顔も一変した。



「その話題はナシだよな。ごめんな……」



「ううん、いいの……郁実のおかげで、今、ここにいるんだもん……」



助けてもらってなかったらって思っただけで、怖い。



郁実は、あたしの恩人だよね……。


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