学校一のモテ男といきなり同居
「なんなのよ……もぉ」



「ゴメンな?俺、イジワルだから。嫌がってる真央が、結構ツボ。なぁ、コッチ来いよ」



ニッと笑う郁実が手招きをする。



「もうっ、からかわないで」



「いーじゃん。横になって、話そーぜ。昨日だって、手ぇつなぎながら寝たじゃん?」



「あれは……不安だったから……」



「今は、俺が不安。明日、親父にうまく自分の気持ちを伝えられるか、自信ない。だけど……真央がいるから。

今親父のところに行ったら、俺…きっと自分を見失う。やりたいこともわかんなくなって、流されて……」



さっきまで笑っていたのに、ツラそうに唇を噛む郁実を見ていると、ギュッと胸が痛くなった。








「郁実……あたし……」



学園長に言われたこと……郁実には、黙っておこうって思ってた。



俺に相談しろって言われてたのに、自分で勝手に判断して、郁実がお父さんのところに戻るように誘導しようって思ってた。



それが……



郁実のためだって、思い込んでた……。



だけど、やっぱり違うよね。



郁実の人生なんだもん、それをあたしが決めちゃいけないんだ。



どんな結果になったとしても、郁実は自分で運命を切り開いていける人。



そんな力強さを、郁実の言葉から感じとった今、



もう……隠し通すことなんて、できない。



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