学校一のモテ男といきなり同居
「そ…そう。わかった……。そしたらあたしたち、もう別れよ?

一緒にいる意味、ないよね」


「だから、そうならないために…」


伸ばしてきた郁実の手を振りはらう。


「近くにいなきゃ、忘れちゃうってどうなの?これから先も、ずっと側にいるなんて、そんなの…不可能だよ」


「不可能か?」


「そうだよ。例えば郁実がデビューして、仕事が忙しくなったら会えない時間が増えるよね」


「それでも俺は、時間作るし」


「忘れちゃうんでしょ?すぐ側にいる、アイドルと仲良くすれば?」


「お前、そーいう言い方すんなよ」


いつになく、郁実の目が厳しい。


強めにあたしの腕を掴むと、静かに自分の方へと引き寄せる。


「忘れるってのは、大げさに言った。

ただ、あっちに行くと…俺もどうなるかわかんねーから…」


「…同じことでしょ?」


「そーじゃなくて。しばらく帰って来れないかも。やっぱ、向こうの生活が楽しくなるかもだし。

それでも真央とは、遠距離でも大丈夫なつもり。そのぐらいの自信はあるから」



「ウソばっか」


「マジで。今まで色んな女と付き合ったけど、お前ほど大切に思うヤツなんていなかったし。

手ぇ出してないのが、何よりの証拠だろ?この俺が、彼女に嫌われんのが怖くてキス止まりとか、ダチが聞いたら笑う」



おどけたような笑顔を見せられて、キュンと胸が高鳴る。


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