学校一のモテ男といきなり同居
「向こうの住所、わかったら早く教えてね」



「おー、もちろん」



ニッコリ笑う郁実に、あたしも最高の笑みを返す。



「明日、さっそく参考書買いに行かなくちゃ」



「……何の話だよ」



フフッ、郁実が真顔になってる~。



「やる気になったんでしょ?え・い・ご!」



いつもイジワルする仕返しに、あたしもたまにはイジワルしちゃうんだから。



「…は?それは、住んでるうちに慣れてくるから…」



「ダメダメ!そんなの絶対なんとかなんないよ。すぐ!始めなくちゃ。友達たくさんできないよ~」



「いや、日本人学校に入るし…」



「買い物はどうするの?道で迷ったら?ねえ、どうする?」



「あ~、うるせえ。真央、俺をイジメて何がしたい?すねるぞ~」


郁実があたしを羽交い締めにする。



「全然、すねてるように見えないっ!きゃっ、やだっ」



もがいて一旦逃れたけど、またすぐに郁実の腕の中。



見上げれば、最高に甘い郁実の瞳がそこにあった……。










「こういうやりとりも…しばらくできないな。寂しいけど……少しの辛抱だから。

もっと、いい男になってかえってくる。それまで……待ってて」



「郁実は……もう、じゅうぶんカッコいいよ。あたしの、最高の彼氏だもん……」



「ずっと、大好きだから。真央のこと、一生大切にするって誓う」



郁実の言葉に、涙が一筋流れた。



「ありがとう…あたしも、郁実が大好きだよ」



どちらともなく顔を寄せ、あたしはそっと目を閉じた。



郁実と過ごす最後の夜。



そのキスは……



甘くて切ない、涙の味がした。





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