学校一のモテ男といきなり同居
「悪い……そんなに嫌がるなんて思わなくて……」



バツの悪そうな草野くんの横で、通行人が怪しげにあたしたちを見ていく。



「あたしこそ……ごめ…んね。こんなことするつもりなかったんだけど……」



なんとか息を整え、草野くんのところまで戻る。



「どうかした?なんか、様子がおかしい…。体調でも、悪い?」



あたしを心配するように、顔を覗きこんでくる。



額に手をあてられそうになって、またその手を振り払う。



「やめて……」



背筋がゾクッとして、首を横に振る。



郁実なら大丈夫なのに……他の男の子だと、ダメ。



もう忘れたはずなのに……



どうしても、あのストーカーとの夜のことが頭をよぎる。



あたし……全然、立ち直ってないんだ。



今、ハッキリとわかった。










「……さん、三沢さん?」




ボーッとしていたみたいで、草野くんに呼ばれる声で我に返った。




「ごめん、あたしやっぱり帰るね……」




「って言っても、俺も同じ方向なんだよな。どうしたらいい?」




そっか。今朝、同じ車両に乗ってたもんね。




「そしたら、あたしが後ろを歩くね」




「わかった」



納得してくれたみたいで、草野くんが先に歩きだす。




あたしはそのあとを、ゆっくりと歩いた。



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