学校一のモテ男といきなり同居
振り返り、目を見張る。



「三沢さんも熱心だな……ずっとここで、俺を待っていたの?」



薄笑いを浮かべる草野くんが、



そこに立っていた。










「ち……ちが……」




思わず後ずさるけど、部屋の隅にいるから逃げ場がない。




「ククッ……見てしまった?俺の最高傑作」




今までなら何とも思わなかった笑い声ですら、不気味に思えてくる。



「どうして……こんな……」



「美しいだろ?ヌードは美の極致なんだよ。俺のビーナスの最高の姿を、魂を込めて描いてみたんだ」



「やめてっ……!!」




顔をしかめ、脳裏に浮かぶ映像を振りはらうかのように、首を横に振る。




その間にも、草野くんはあたしとの距離を縮めてくる。




「そのポーズが嫌だって言うなら、何度だって描きなおすよ。今日は時間ができたんだ……さあ、いつものようにそこに立って」



「い……や……」



そういう目で見られてるってわかった時点で、



もう、ダメだ。



気持ち悪くて、吐き気がしてくる。



ここで倒れたら、草野くんの思うがまま。



もしホントに、合鍵を勝手に作るような人だとしたら……



何をされるかわかったもんじゃない。



そうだよ……今、気分が悪くなるわけにはいかないの。



歯を食いしばり、なんとか意識を保つ。















ここに来るって、友ちゃんに伝えてから来ればよかった。



用事があるから先に帰るって言ってたし、もう学校にいないはず。



白雪ちゃんとミキオくんも、



今日は例のふたりの女の子の家を先に確認するって言ってた。



だから美術室には、あたしと草野くん以外の人間が現れる可能性は低い。



美術室から逃げようと思ったけど、入口にたどり着くには、草野くんを突破しなきゃいけないし、



自分で……なんとかしなきゃ。




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