学校一のモテ男といきなり同居
「おいっ、お前らケンカか!?やるなら顔外せよ」




部屋の中から出てきた星野さんが、そんなことを言う。




「テメーは、いつも口だけだよな。後から来た俺に抜かれて悔しいなら、仕事で見返せよ!!」



郁実はそれ以上殴ることはなく、茶髪の男の子の体を床に投げ捨てた。



「テメーみたいな顔のヤツなんか、この世界に掃いて捨てるほどいんだよ!!思いあがんな。

クソッ…こんな将来性のない事務所、今すぐやめてやるよ!!」



茶髪の男の子は、そう吐き捨てて出て行ってしまった。








郁実は振り乱した髪を無言で整えている。



その表情は、怒りにまみれていた。



なんて声をかければいい?



茶髪の男の子が言ってたようなことはないにしても、プライドを傷つけられたのは確かなはず。



あたしは、誰より郁実が一番素敵だと思うけど、今の郁実にそんなことを言っても、


ちょっと違うような気もするし…。



こんなときに、かける言葉が見つからない。



黙っていると、高木さんが現れた。



「何の騒ぎ?大きな音がしてたけど」



「ゴメン…俺のせいで、アイツ事務所をやめるって…」



「アイツって?え…だから、今走って出ていったの?」



「あぁ…俺、追いかけてくる」



郁実が行こうとすると、高木さんが郁実の腕を掴んだ。



「行かなくていいよ。アイツ、辞めたがってたし。あたしは、郁実がいればそれでいいの」



ドキッ…。



高木さんは、郁実を見上げて視線を逸らさない。



ふたりのただならぬ雰囲気に、耐えられなくなってきた。



やっぱり…ふたりは…。



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