学校一のモテ男といきなり同居
「郁実、アイツを呼び戻しに行ったの。ごめん、もうこんな時間になっちゃったね…」




高木さんが申し訳なさそうな顔であたしに頭を下げる。




そうなんだ…呼び戻しに…。




「帰ります。あたしこそ、お騒がせしてすみませんでした」




「そんなことないよ、なら送っていくね」




「ううん、ひとりで大丈夫」




「そんなことしたら、郁実に怒られる。絶対にひとりで帰すなって言われたから……」




そう思うなら、一言かけて欲しかった。




いくら急いでるからって、この状態で置き去りなんてあんまりだよ。




不満に思うけど、郁実にだってできない事情があったんだろうけど。




葛藤が続く中、星野さんがパンと手を打った。













「高木ちゃん、今後ここの手伝いを…この子に任せない?」



「えっ?」



「飯がうまくてさ~、あ、いや。高木ちゃんも外回りが多いし、高校生でも電話ぐらいとれるでしょ。仕事の電話、全部に携帯に転送してたら大変だし」




「そっ…それはそうだけど…ウチにはもうひとり雇う余裕なんてないよ」




そうだよね、さっきも経営状態が悪いって言ってたぐらいだし。




「外回りして、ムリにこっちに戻って来て飯作って家事やって。このままだと、高木ちゃんが体を壊す。

ただでさえ心配事が多いし、しばらく仕事だけに専念した方がいい」



「そんなことない…」



「体が資本だよ!自己管理も仕事のうち。この子のバイト代、なんなら俺が出してもいいし」



「そっ、それはダメ!わかった…考えておくね。っていうか、真央ちゃんはいいの?それに、郁実がいいって言うかな……」




「あのっ…あたし…」




高木さんがそんな状態なら、手伝おうかという気もおきるけど…ここで働くと、高木さんと郁実の姿を目の当たりにするわけで。



なんにもないって言っても、やっぱり気になる。



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