学校一のモテ男といきなり同居
「郁実って、頭に血がのぼると止められなくなるときがあって…ケンカっ早いところは直した方がいいよね…」



「そーだね。だけど、いいなぁ…あんなに想われて」



ふと、高木さんがため息を漏らす。



そんな言い方をされると、超複雑。



だって、あたしだって高木さんの立場が羨ましい。



郁実と一緒に住んで、勉強を教えるっていう口実で部屋にふたりっきり。



それが例え30分だとしても、その間、高木さんが郁実を独り占めしているって思っただけで、胸がギュッと痛くなる。



「あ、ゴメンね。そんな顔しないでよ…ほら、年下だし。恋愛対象としては、興味ないよ」



そんな風に付け加えられても、今さらって気がする。



だって、顔に出てるよ。



郁実のことが、好きだって……。



話していて、わかってしまった。



いくら口で否定しても、そういうのってわかる。











「ハァ…」




ふたりして、ため息。




「えっ、真央ちゃんどうしたの?郁実も遅いよね、逃げたヤツのことなんてもういいのに…」




そうだ、さっき別室でどんな話をしてたんだろう。




聞いてみようかな…。




「高木さん、郁実が殴った男の子が出て行ったあと別室に入ったのって…」



「あぁ…スケジュールの確認。あの子明日、ドラマの仕事が入ってたの。せっかくとった仕事で、絶対に穴空けられなくて。

郁実はそれを知ってたから、他のタレントさんに空きがないか一緒に確認の電話をしてくれて…」



そうだったんだ……。



あたしはてっきり、星野さんが言うように高木さんの相談相手になっているのかと思ってた。



あの状態で高木さんがツラいのもわかるけど、別室でこもって話すほど親密な関係。



そこに、あたしの入る余地はない気がしたから…変に疎外感を持ってしまったけど、違うんだ?



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