学校一のモテ男といきなり同居
「そんなこと言わないでよ、今まで頑張ってきたじゃない。CMの仕事だって、自分で見つけたんだって星野さんが言ってたよ?」




「そうだけど…もともとは、ダチとバンドやりたかっただけだし。なのに気付けば俳優のような仕事ばっかやってる」




「そこから、繋げていけばいいんじゃないの?」




「そう思ってたけど……そんなに、甘くなかった。求められてるのは俺の歌じゃなくて、見た目っつーか」




「郁実には、凡人にはない特別なオーラがあると思うの。あたしが保障する!

売れてからCD出す人もいるし、郁実の夢は今の仕事の延長でいいんじゃないの?」




「そんなウマくいかねーよ。CMの仕事のあとに来た仕事ってモデルとか、ドラマの仕事ばっかで…」




自分から突き放したものの、やっぱり事務所を辞めるとなると後悔だらけなのかな。




いつも前向きな郁実の口からは、弱気な言葉しか出てこない。












あたしは足を止め、立ち止まった。




合わせて郁実も、足を止める。




「そういうの、郁実らしくないよ」




「…………」




俯き顔を逸らす郁実の手を、ギュッと握りしめる。




「前に言ってたよね。欲しいモノは全部手に入れるって…。欲張りなんでしょ?だったら、全部こなせばいーんだよ。

モデルも俳優も、バラエティもミュージシャンも。マルチタレントっているよね、あーいうの目指せば?」




「……は?俺が?」




全然やる気なさそう。




「これだけって絞る方が難しくない?今は色んなタレントがいるし、郁実なら見てるだけで元気がでる」




「それって、見た目だけってことかよ~」




「そうじゃなくて、色んな才能があるってことだよ。時間かかってもいいじゃない…最終的に、バンド活動ができれば、それでよくない?」




「そーだけどさ……さっき、3年だって待てないって言ったヤツの言う言葉じゃねーな」




ハッ、そうだった。




あたし、全然説得力ない。



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