チョコよりも甘く
「えっと、その…」


「何だよ、」




紗姫は葵のことを言っていいか分からなかった。


葵はきっと、言っていいよっていうよね?
あたし…言ってもいいのかな…





「葵が妊娠して…それで、彼氏に俺じゃないって言われちゃって…」



「……。」


龍斗は紗姫の膝を見ながら聞いていた。





「あたしだけ、こんな幸せになってていいのかなって思って。思わず…逃げ出しちゃったの…、ごめんなさいっ」



紗姫の目から涙が出てきた。


葵…
ごめんね、





「その彼氏って誰だよ?」


龍斗は携帯を取り出しながら言った。




「D組の中井くん…」

紗姫がそう言うと、龍斗は電話をかけだした。






……「あ、もしもし、俺だけど…。保健室に中井呼んでくんね?」




(あー、あいつ今…女と体育館裏にいるよ、)




龍斗の表情が変わった。





「わかった。サンキュ…」




ピッ――




電話を切ると、龍斗は保健室を飛び出した。
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