チョコよりも甘く
紗姫はその場で立つことさえも出来ないくらい、力を失った。


先が見えない真っ暗なトンネルを、ただ独りで歩いている感覚だった。





「紗姫、…」




玲汰は何も言わずに、ずっと傍にいてくれた。



本当は自分も辛かったはずなのに。
あたしの支えばっかりして。

本当に玲汰はいい人すぎるよ…






「俺ん家、行こうか…大丈夫。何もしないよ?」


気が付くと、部活の終わりの時間になっていた。




ぞろぞろと階段から生徒が上がってくる。
玲汰はあたしなんかのために部活を休んでしまったのだ。





「うん」




紗姫は立ち上がり、涙を拭いた。
もう龍斗は、あたしの涙を拭いてくれない。




償えきれないほどの過ちを犯した。
あたしは少しの逃げで、大切な人を傷付け、失った。






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