チョコよりも甘く




ふいに、龍斗の雑誌の読む手がとまった。


「どっちだかわかんねぇよ。」

龍斗は髪をグシャグシャっと掻き、立ち上がった。


それから、棚の方まで歩いて行き、引き出しを開け、なにやら中から取り出した。

そしてまた紗姫の方に戻ってくる。


ソファに座り、紗姫の前に握った手を出した。ゆっくりと手を開らくと、中には小さな砂時計があった。

銀色の光る砂が中に入っていた。

龍斗はそれを、あたしの手に持たせた。


「あと1分で決めろ。」

そう言って砂時計をひっくり返させた。


「え…。」

1分って…短すぎるよ、、、。


あたしはやっぱり決められなかった。



そんな間にも、砂はどんどん下にこぼれていく。



部屋は、砂時計のサラサラという、かすかな音がするだけだった。


あたしがキスをする事がなければ、砂は完全にこぼれきってしまう。






あたしは決めた。






このままなにもしないで、1分間を過ごそう、と



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