チョコよりも甘く
「もう遅いし、泊まってけば?」


気が付くと、もう10時になっていた。


「ううん。大丈夫だよ、あたし帰るねっ」


龍斗は一瞬哀しそうな顔をしたが、わかってくれたのか、送る準備をした。





明日、玲汰に謝らないと。
紗姫はそんなことを考えながら、部屋を出た。











「龍斗お坊ちゃま、奥様がお呼びしています。」



玄関前に来たところで執事に呼び止められた。





「わかった。…紗姫のこと車で送ってくれ、」




龍斗はため息をつき、重い足取りで奥の部屋へと歩いていった。


執事は、龍斗の後を見つめている紗姫を外へと誘導した。







「こちらです。」



執事はそう言うと、車のドアを開けた。






紗姫にとってこんなにも高級な車に乗るのは初めてだった。
緊張しつつも中に入った。






「並木ですか?」
「あ、はい。」






紗姫は遠ざかっていくお屋敷を見つめていた。




「こんなこと話すのは失礼かと思いますが…」



前を向くと、バックミラーに悲しそうな顔をした執事が写った。










あたしは今でもその表情を覚えている。






< 133 / 172 >

この作品をシェア

pagetop