チョコよりも甘く

｢龍斗お坊ちゃまの兄､和樹様のことをご存知ですよね？｣




｢はい｣



以前龍斗から話を聞いたことがあったので､紗姫は不思議に思いつつ､頷いた｡







｢和樹様が自殺してしまったのは､婚約が原因なんです｡｣





紗姫は唖然とした｡


そして急に不安が圧し掛かってきた｡
龍斗もそうなってしまうのではないかと…







｢私は何度も相談にのりましたが､彼女と別れることを勧めたのです｡しかし､和樹様はずっと別れずにいました｡｣





曇った窓に､薄っすらと外が映っていた｡
雪が降っているようだ｡




普段なら綺麗と思える雪も､紗姫にとっては綿としか感じられなかった｡





｢奥様は２人が別れないと聞くと､彼女の父の会社を倒産させ､家族を自殺まで追い詰めました｡｣





｢・・・｡｣





紗姫は下を向き､目を瞑った｡
これ以上聞きたくないと願い､溢れる不安を抑えようとしていた｡







｢信じられないと思いますが､これが現実です｡…そして和樹様は､最愛の人の後を追うようにして亡くなりました｡｣





執事の目に光るものが見えた｡
紗姫はひたすら下を向き､執事の話に耳を塞いでいた｡