チョコよりも甘く
執事に言われ、俺は母親の部屋へと向かった。
切なげに俺の背中を見つめる、紗姫の姿が目に浮かんだ。





これから話されることには覚悟を決めていた。
俺は絶対に紗姫を守る。…






ドアを開けると、案の定、優しく微笑む母親がいた。
この笑顔は偽りのものだ。



兄貴に言ったことと同じことを言うのだろう。






「龍斗、ここに座りなさい」




俺は示された椅子に座り、ため息をついた。
最近ため息が多いのは気のせいだろうか?






「何だよ」
「口の利き方に問題があるんじゃない?」




母親はそう言うと、書類を目の前に出した。





「私が何言うかは分かっているわね?…紗姫ちゃんのこと、大切にしているんでしょ」




「俺は絶対、婚約なんかしないからな。」






俺は立ち上がり、部屋を出ようとした。











「それなら、あなたも和樹と同じ道を辿るのよ!」







言葉が出なかった。




紗姫だけには、手を出すな!
それだけが俺の願いだった。








「高校卒業するまで待ってくれ、」


そう言い残すと、母親は満足したのだろう。戻っていいと言った。













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