チョコよりも甘く
「ここで少し待っててっ…」

あたしはそう言って家の中へと入った。


「お父さ―ん、お母さん…!!翔が来てるんだけど…」



少ししてからお母さんが出てきた。

お母さんは泣いてはいなかった。


「どうそ、あがって?」


お母さんはドアの隙間から見える翔に向かってそう言った。


「おじゃまします。」

翔は、玄関の入口の段差につまずきそうになりながらも、中に入り、靴を脱いだ。



お母さんはリビングへ入っていった。


あたしと翔は目を見合わせた。

「―大丈夫。…きっと大丈夫だから……」


翔はそういって手を握ったが、その手をすぐに離し、リビングへと歩いた。




部屋に入ると、さっきの翔の家と同じような沈黙の空気が流れていた。


「座りなさい。」

お父さんは、普段あたしを叱るときのような声で、翔にそう言い放った。

「失礼します。」


翔はお父さんの向かいに座ったので、あたしは翔の隣に座り、お母さんはあたしの向かいに座った。
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