チョコよりも甘く
「どうするつもりだ?」



お父さんは冷めた目で翔を見つめると、口を開いた。
あたしは許してもらえるか不安になったが、同じ経験をしたお父さんを信じた。






「僕は葵さんを愛しています。まだ結婚はできませんが、一緒に子供を育てていきます。ですから、葵さんを僕にください。…」





翔は少し緊張しつつも、丁寧な口調で答えた。








するとお父さんはワザとらしく咳をすると、あたしを見た。





「辛い思いをするのはお前だぞ。」









あたしは息を呑み、お母さんを見た。





きっとお父さんはお母さんのことを見てきて、そう言ったのだろう…
お母さんは昔のことを思い出し、目を潤ませていた。







「あたしは、翔となら頑張れる。それに赤ちゃんを守りたい!!」



あたしがそう言うと、お父さんはテーブルの上で指を組ませた。

「葵はそうやって、昔から自分の意志は最後まで貫き通そうとする奴だったな―…。」

お父さんは遠い目をして、思い出にふけっている様子だった。


少し間をおいて、彼は言った。

「それは…長所でもあるが、今は違うんじゃ…」
「お父さん!!」

お父さんの言葉をお母さんが泣きながら遮った。






―お父さんは、出産を認めなかった。
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