嘘の誓いとLOVE RING


「あの…、お二人は何をしてるんですか?」

すると、佐倉さんは愛想良く答えてくれたのだった。

「社長が、コーヒーの入れ方を教えてくれって言うものですから」

「そうですか…」

コーヒーの入れ方!?

だいたい、この時間は毎日清掃をしているんだから、時間をずらしてくれればいいのに。

邪魔だったらない。

すると、それを察したかの様に凌祐が言ったのだった。

「すぐに戻るから、出来るところから始めて」

「…はい」

偉そうに言われる事に腹が立つ。

だけど、ここは我慢で清掃を始めたのだった。

その間にも、二人は楽しそうに話をしながら、コーヒーを準備している。

それを見たくなくて背を向けていると、しばらくして「あつっ!」と佐倉さんの声がした。

反射的に振り向くと、佐倉さんが指をお湯でヤケドをした様だった。

「だ…」

“大丈夫ですか?”

そう言おうとするより先に、凌祐がその手を取った。

「大丈夫か?冷やした方がいい」

水道の水を指に当てながら、凌祐は佐倉さんを見た。

その凌祐に、佐倉さんは笑顔で応えている。

そのやり取りを見て、思わず顔をそらしたのだった。

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