嘘の誓いとLOVE RING


「まだ赤いな。そうだ。部屋に薬があるから塗ろう」

凌祐はそう言うと、背中を向けたまま、「邪魔して悪かったな」と言い残して佐倉さんと給湯室を後にした。

二人が出て行った後の給湯室は、コーヒーの匂いがほのかにしている。

今頃、凌祐は佐倉さんに薬を塗ってあげているのか…。

そんな想像をすると、
切なくなってくる。

そんな私を、圭祐は「ヤキモチを妬いてだけじゃないか」と、呆れた様に言っていた。

それを全力で否定したけれど、圭祐はトドメを刺す様に言ったのだった。

「いい加減に認めろよ。美亜は兄貴が好きなんだ。だから、佐倉さんとの関係が許せない。そうだろ?」

それを指摘されて、反論する余地がなかった。

私が凌祐を好き…?

それは、認めたくないけれど、本当の事だ。

そう。

私は、凌祐が好きなのだ。

だから、嫌だというだけの事。

関係のあった女性が、凌祐の側にいる事が。

そして、凌祐がその人を大事に思う気持ちが。

どうしても、許せなかったのだった。

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