嘘の誓いとLOVE RING


「あ…」

“ありがとう”

そう言おうとしたけれど、凌祐に険しい顔を向けられ言葉を飲み込んだ。

それでも手は、指輪を返してもらおうと差し出したまま。

だけど、凌祐は指輪をジャケットの内ポケットへ、しまったのだった。

「これは、俺が預かっておく」

「えっ!?」

呆気に取られた時に、ちょうどエレベーターが開き、凌祐たちは乗り込んだ。

だけど、足がすくんだ私は、その場を動けなかったのだ。

「乗らないのか?」

凌祐は扉を開けてくれているけれど、圭祐の「先に行って」の言葉に、それは閉まったのだった。

圭祐と二人きりになったエレベーターホールで、大きなため息が響く。

それは、圭祐のため息で、呆れた顔を向けられた。

「ったく。美亜の完敗だな。素直に折れた方がよくないか?」

半泣き状態の私は、それでも大きく首を横に振った。

「出張まで…。出張までは耐えるわ」

二人は思い出の場所で、会う約束をしているのだ。

その現場を掴んで、証拠として突き付けてやると決めているのだから。

「まあ、今はどうにもならないか。とにかく今夜は、飲もうぜ」

「うん…」

圭祐に連れられて、夜の街へと飛び出したのだった。

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